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088. 2017年を振り返る(極私的)
2017年12月27日
 これは2017年のベストアルバムだとか、そういった類のテクストではない。タイトルにもある通り、極私的なものである。
 
 2月の下旬――チケットを確認すると25日、土曜日だった――その日は僕にしては珍しく予定が2つ入っていた。
 午後3時くらいだったか――記憶が定かではないが(今後こういった表現が頻出する。もう10か月も前のことなので)、待ち合わせ場所である新宿駅南口で、柱にもたれバスタ新宿をぼんやり眺めていると、1つ目の予定であるお茶の相手から、時間に遅れると連絡がきた。陽があったのでとても外にいられない寒さではなかったような気がする。なおもどこを見るとはなしに見て待っていると、僕のすぐ近くで通りがかりの若い女性に声をかけている男がいた。耳に入ってきた二人の会話から、どうやらストリートスナップのようで男はモデルがどうとか話している。二人は道路際の柵まで行き、男が女性の写真を撮り始めた。僕が見るに、その女性の服装は別段個性的でも洒落てもなかった。彼はいかがわしいスカウトだったのかもしれないし、彼が撮ったスナップは本当に雑誌やネットに掲載されたのかもしれないし、ボツになったのかもしれない。彼女は何かツボを押さえたファッションだったのかもしれない。何となく僕は虚しい気分になっていた。
 やがてお茶の相手が来ると挨拶もそこそこに喫茶店へ向かった。確か行く店をあらかじめ決めていたような気がするが、そうではなかったかもしれない。少し道に迷ったのは覚えている。喫茶店に着くも、その日は土曜、時間もちょうどお茶時だったせいだろう、店内は客で一杯だった。喫茶店は諦め、僕は以前、知人と来たことのあるカフェを思い出したので、そこへ向かうことにした。しかしそのカフェも満席で――小さい店なので致しかたないが、店の外にある階段には入店を待つ客の列ができている始末である、諦めざるを得なかった。どこか入れる店はないかと探す中、僕は“いつもこうだな”と自嘲気味に思っていた。僕が人と会って行こうとする店は定休日か満席なことが多い。ちゃんと下調べをしろよ、予約しろよ、という簡単な話なのだが、とにかく間が悪い。最終的にハンバーグが売りのファミレスに落ち着いた。僕はナゲットだとか軽いものを頼んだはずだ。気を許していない・慣れていない場所や人の前だと、ちゃんとしたご飯が食べられない。相手はハンバーグを注文していた。
 お茶の相手は楽曲や映像を作る人で、音楽や制作の話に終始したと記憶している。その方が以前制作した映像作品も見たことがあり、作ろうと考えていたMVのイメージに合うと思っていた僕は、「みつけて未映子さん」のMV撮影・監督をお願いした。

 夕方になり解散すると、僕はWWW Xで行われるLampのライブを見るため渋谷へ向かった。最前列で見る気は無かったので、19時開演のギリギリ前に着くように時間を調整していた。物販を買い会場に入ると、中は既に満員の人で溢れており、果たして僕はほぼ最後列で見ることとなった。しかしステージを見るのに全く問題はない程、ライブハウスは距離が近い(欅坂・乃木坂等の大規模なライブに行くようになった今、改めてしみじみと思う)。
 BGMが止み、ほどなくしてメンバーが袖から現れると、ライブは始まった。
 Lampのライブは初めてだったが、セットリスト、アンコールまでとても素晴らしく(MCもゆるくて面白い)、あっという間の2時間だった。
 良いライブを見た充足感に満たされたまま、僕はすぐ近くに開かれた出口の扉へ向かった。いざ扉から出ようとした時――何の気なしに、である、一斉に外へ出ようとした人の波で少し歩みが遅くなり止まりかけた僕は、何の気なしに横を見た。すると人混みの中、一人の女の子が目に入った。お互い「ん?」という感じで3秒くらい無言なまま目が合った。それは何とも形容のできない間だったが、やがて彼女は「あ!」と了解したように笑顔になり、僕もきっと同じように顔を崩していただろう、お互いが誰であるのかを認識した。それはおよそ2年ぶりの再会だった。
 彼女とは2015年まで、たまに会って話などをしていた。当時、彼女も曲を作っていて、僕はその曲をどれも気に入っていた。共通の好きなアーティストがいくつかおり、その中にLampがあった。僕がこの日、新宿で思い出したカフェは、以前この子と行って話をした店だった。
 ある時、彼女は曲を作るのをやめてしまった。 “曲を作っている”という大きな共通点を無くしてしまい、どう関係性を続けていけばいいのだろうと思ったことは一切なかった、と言えば嘘になる。そもそも話すようになったきっかけが、お互い曲を作っていることだったからだ。ただ、単純に彼女のする話は面白かったし、今まで通りたまに会って話ができればいいなと思っていた。しかし、上記のようなことをほんの僅かでも考えてしまいがちな低いコミュニケーション能力も相まって、僕は空回ってしまった。それから、彼女と会うことも連絡を取ることもなくなっていった。
 久々に会った彼女は「絶対来てると思った」と繰り返し言っていた。僕も“もしかしたら来てるかもなぁ”と思っていたが、例え同じ会場にいたとしても会えるとは微塵も思っていなかった。ライブ後の高揚感と驚きがない交ぜになった妙なテンションで頭が回らず「びっくりした!来てたんだ」としか僕の口からは出なかった。彼女はライブ開演後、少し遅れて来たと言っていた。やっと「元気?」と聞けた。通路の端で立ち話のような形になり、軽く近況も話した気がするが、曲は今も作っていないのかどうか、ずっと気になっていたことだったが、聞けなかったし聞く気も起らなかった。申し訳ないと思っていた、とも言うべきか瞬間頭をよぎったが野暮に感じた。それら全てが、今の状況に水を差してしまいそうだった。彼女は以前とはどこか雰囲気が違って見え、元気そうなことがただただ嬉しかった。僕たちは恐らく10分と話していなかったと思う。話したいことや聞きたいことは確かにあったが、その時、僕は何だかすぐに立ち去ってしまった方がいいような気がしたのだ。彼女が「他にも知り合いが来てるみたい」と言い誰かを待っているような感じもしたので、あまり長く話しているのも悪いなとも思った。僕は人との別れ際が苦手なタイプなのだが、久々に会ったのにもかかわらず、自分でも驚くほどにあっさりと「じゃあ俺は帰るよ」と言って別れた。「またアルバム作ってるんだ。良かったら聴いて」と宣伝までしていた。帰り際にLampのメンバーから、物販を買った人向けのサイン入りカレンダーを貰った。「凄くよかったです!」と興奮気味にライブの感想を伝えた。
 ライブハウスから渋谷駅へ向かう途中、僕は“こんなことあるんだ、何て偶然なんだ”とずっと思っていた。最後に会って以来、ずっとどこか引っ掛かっていた彼女の存在だが、元気そうな様子に、とにかく安心したのだった。そのことをひたすら反芻していた。
 彼女はこの日のことをどう思ったのか分からないし確認しようもない。何故なら、久々の再会を期してから現在に至るまで――今まで通り、と言えよう、連絡は全く取っていないからだ。

 「みつけて未映子さん」のMVを作ろうと思い、どうしようか考えた時、実はこの子のことがイメージ――あくまでも漠としたものだが――としてパッと頭に浮かんでいた。当然だが、それはあくまでも僕が思う表層的、MV向けにチューニングされたモデル像であって、彼女の本質的なものではない。僕の理想や妄想も混ぜ合わせたイメージを構成する、一つの小さな要素だ。
 6月に都内でMVの撮影をした。出て頂いたモデルさんや監督さんのおかげで素敵なMVになった。

 12月13日、Lampのライブがあったので見に行った。季節はまた冬になっていた。渋谷から京王井の頭線に乗り継いでライブハウスがある新代田駅で下車した。やはり開演時間に合わせて行ったため、会場内は既に人で埋め尽くされていた。偶然にもライブ会場で会う、という経験を2月にしてしまっていた僕は、Lampのライブだし今日も彼女が来ているかも、ということを明らかに意識していた。積極的に探して回るようなことはさすがにしなかった。
 同じことの繰り返しになるが、ライブはとても素晴らしかった(「さち子」「最終列車は25時」は白眉!)。
 終演後、次に行われるライブ(新作となるアナログの先行発売もある!)のチケットを販売するというので、絶対に行きたいと思った僕は列に並び、無事購入すると、それ以外何の出来事もなく帰路についた。結局、この日のライブで彼女に会うことはなかった。そもそも来ていたのかどうかも分からない。2月のようなことが都合よくまた起こるわけがない。そんなものである。帰りの電車内でツイッターを見ていると、何とMVに出演して頂いたモデルの方がこのライブに行く旨のツイートをしていて驚いた。是非挨拶をしたかったが遅かった。もっとはやくツイッターをチェックしておけばよかったと後悔した。しかし、まさかモデルの方が来ているとは思わなかった。
 MVとLamp。年末という特殊なムードも相まってか、奇妙な縁を感じざるを得なかった。何かは分からない、とにかく何かが円環となって閉じた。そんな気がした。今年の2月の出来事が今まで連なって、年の瀬の
この日のライブをもって帰結した――何とも僕らしい肝心なところを決められない、締まりのない納まり方で。僕は寒空のもとLampを聴きながら帰った。


(アルベルト志村)
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