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026. 頭痛
2015年03月07日
 夜中、頭痛で目を覚ました。

 部屋は暗かったが、目が慣れる前に家具や身の回りの小物の輪郭をぼんやりと認識できた。何も見えないわけではない暗さに、私は朝の4時くらいかと思ったが、トイレに行って時計を見るとまだ午前2時半だった。さっき寝たばかりなのに。自分だけ時間に置いてけぼりにされたような妙な感覚だった。夜の長さに気付かされ、何故か不意に、あの人はこの時間もまだ起きているのかな、と考えた。自分でもどうしてこんなことを考えたのか分からなかった。そして私は確実にひとりぼっちな気がした。
 そのまま起きている気力もなく、朝に辿り着くための一番の近道は寝ることしかこの夜にはないように思われたので改めて床についた。しかし目をつむると頭の中から血液がどくどくと流れる音が聞こえてきた。音は次第に大きくなっていき、それに合わせてずきずきとする頭痛は治まる気配がなく、眠れそうになかった。

 こういう時、私はいつもバファリンをのむ。

 特にこだわっているわけではないが、うちには子供の頃から常にバファリンがあるのだ――パブロンではなく。少し億劫だったが布団から出て起き上がると、台所へ行った。1錠だけ――本当は成人の用量は2錠だ――服用すると、布団に戻った。寒くはなかった。頭痛のせいか妙に頭が冴えて、考えるというより勝手に思考が、止めどなく浮かび上がってきた。脈打つ血流と重なり、巡り、次から次へと消えていった。昨日のこと、今日のこと、明日のこと、仕事のこと、友人のこと、家族のこと、恋人のこと、音楽のこと、映画のこと、小説のこと、テレビドラマのこと、美術館のこと、車のこと、電車のこと、ごはんのこと、パンのこと、猫のこと、犬のこと、生のこと、死のこと、それらは全て取るに足らないもののように感じたし、とても重要なもののようにも感じた。
 やがて頭の痛みも徐々に消えていくのを感じ、遠くゆらめいた眠りの気配にほっとした。しかし反比例するように、胃がきりきりと疼きだした。食後に飲むべき薬の用法を守らなかったことを少し後悔したが、すでに用量は破っている。ましてやこんな夜中に、頭痛がしているのに食欲なんてあるわけがないではないか。
 私は、バファリンの優しさはやっぱり半分なんだ、と思った。優しさはどちらかしか救えないのかな、私にそのどちらかを選べるかな、そもそも選択する権利はあるのかな――などとぼんやり思っていたら、いつの間にか夢も見ない深い眠りに落ちていた。


(アルベルト志村)
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